imakokoparadise’s diary

科学的エビデンスを最重視はしません。 エビデンスがなくとも論理的に適当であればそれを正しいと仮定して進む。私の目的は、得た結論を人生に適用して人生をより良くすること。エビデンスがないからと言って止まってられない。 目的は、皆の不安を無くすこと。

村上春樹「女のいない男たち」のこと 2023年9月

1968年にフランスで冬季オリンピックが開催された。そのときの主題歌は「フランスの13日」という曲で、私の人生の懐メロのひとつになっている。この曲のことはブログに書いたことがある。

 

https://imakokoparadise.blog.jp/archives/13250831.html

 

今でも時々この動画を見る。ここに映し出されている絵画も、かつての華やかで勢いがあったころのパリを彷彿とさせているようで好きだ。(何を間違ったのかブログには「パリの13日」と私は訳しているが)

 

先日この動画を見ているとき、何気なくコメント欄を見ると、murakamiとかmen without women というコメントが幾つか上がっていた。murakamiが私をここに連れてきた、と言うような内容だ。murakamiって村上春樹のことかなぁ、でもこんな題の小説は知らないなぁ、と思ってウィキペディアで調べてみると「女のいない男たち」という短編集があった。パリのことが舞台になっているのかな、と思い、図書館で借りてきた。彼の短編小説は初めて読む。

 

うーん、やはり氏は小説が上手い。微妙な心をうまく捉えている。小道具の使い方も上手だ。細かな場面描写の比喩も過剰でなく、ギリギリ適度だ。主人公たちの14歳という年齢設定も絶妙だと思う。

この作品は初老以降の人にしか書けない、つまり肉体的に老いを感じた男が、かつての若かった感覚を懐かしみ、かつその記憶の受容に戸惑う経験をした年齢でしか書けない作品だ、と思う。

 

で、肝心のパリはどこにも出てこなかった。メタファーとして一角獣や噴水が出てくるので、それとパリを合わせて検索をかけたがヒットしない。同じ短編集の別の作品かと思って他のも読んでみたが、どこにもない。

で、本作品の後半に「エレベーター音楽」(エレベーターに乗ってるときにかかる毒にも薬にもならない音楽)としてしばしば出てきた「白い恋人たち」が気になった。よく聞く名前だけど、どんな曲だったっけ、とユーチューブで流してみると、まさに「フランスの13日」であった。この曲は「白い恋人たち」という映画の主題歌だったのだ。

つまりコメントの、ここに辿り着いた、とは場所のことではなく、数ある「フランスの13日」の動画の中のまさにこの動画のことだったのだ。こういうのがファンの密やかな楽しみなのだろうか。

それにしてもしかし、この小説の中で「フランスの13日」は否定的な価値として扱われているのに、ここに辿り着いて、ハルキを感じてていいのか、と思う。



追記

 

村上氏はスーパーマン志向だと思う。早稲田在学時に吉祥寺でジャズ喫茶を開店し、それで食べていたはずだ。幾つか英語の小説を翻訳していることから分かるように、氏は英語に堪能である。氏の小説には音楽が雰囲気を伝える道具として重用される。音楽にも造詣が深いはずである。氏は若い頃トライアスロンに出場している。もちろん小説もうまい。

つまりマルチタレントなのだ。けれど、放っておいて勝手にそうなる物ではないだろう。これだけの能力に秀でることは、本人の意思と努力が無ければ達成できない。

つまり村上氏はスーパーマン志向なのだと思う。