職場の同僚と喋っているとき、「目が覚めた時、仕事行くの嫌だなぁ、と毎朝思う」とある人が言うと、その場にいた全員が相槌を打った。
私はひどく驚いたのである。それじゃ、毎日が灰色じゃないか、と。同僚は全員が50歳以上だが、この年になって、まだそんな毎日を送っているのか、と、重苦しい気持になったのである。
そういう私も30代後半まではそんな毎日を送っていたのである。それまでは砂を噛むような人生であった。朝、永遠に目覚めたくなかったのである。一日中、布団にもぐっていたかった。
30代後半に、これは何かが間違っている、と思い、本を読んだり、自分でいろいろ考えてみた。
結果、2つのことが大切なようだ、という結論を得た。
ひとつは、未来に楽しみを置くのではなく、今この瞬間を楽しむこと。そして、今の楽しい気持ちを感じること、である。
もうひとつは、目の前のことを一生懸命にすることである。
特に前者は、決定的に大切だったと思う。いま流行りのマインドフルネスもここに含まれる。
で、気付いたら、いつの間にか世界が灰色ではなくなっていたのだ。いつの間にか、毎日がしみじみと楽しい気持ちで満たされていたのである。
それは不思議な経験であった。
今から思えば、結局私は、自己肯定感を涵養したのだと思う。世によく言われる言い方をすると、ありのままの自分でいい、と思えるようになったのだと思う。明確な自覚はないけれど、そういうことなのだと思う。
この体験を皆に伝えたいと思うのだけれど、どうもうまく通じない。私の伝え方の何かが間違っているようである。この2つの命題を成り立たせるその手前の前提が他者との間で共有されていないのだと思う。