以前「中田語録」という本が売れたことがあった。他にも、あるスポーツに名を残した選手の名言や生き方を書籍にしたものをよく見かける。
どこで読んだのか思い出せないが、ある国のジャーナリストが、確かフランスだったと思う、私たちはスポーツ選手に自分の生き方を教えてもらおうとは思わない、と書いていた。すこぶるまっとうな意見だったが、それを読んで何故か笑ってしまった。
日本には茶道や華道など、道を求める伝統がある。具体的な物事を練習することによって、生きる道を学ぶ、という考え方だ。柔道もそうだろう。ただ強ければよいのではない。自己抑制的で、礼儀正しく、模範的であることが大切だ。柔道の場以外でも人格者であることを期待される。
何か大きなことを成したのなら、その人は道を究めたに違いない、という暗黙の了解が日本人にはある。
だから有名なスポーツ選手の語録は売れるのだ。しかしヨーロッパにはあることに熟練することによって、生きる道を学ぶ、という伝統が無いのだろう。
だから先のジャーナリストのようなちぐはぐな反応が起こるのだと思う。