先日実家に帰ったとき、通称便所バチを台所で見た。コンポストのそばでよく見かける。雑草を捨てたコンポストのそばによくいるから幼虫は植物由来の腐敗有機物を食べると思っていたが、調べてみると動物由来の腐敗有機物、具体的には死骸や糞も食べるようだ。生物からすれば、分解された有機物の由来が動物か植物かは関係ないのだろうか。分解されてしまうと同じ分子になるのだろうか。
標準和名はアメリカミズアブと言うようだ。
で、台所の壁に留まっているそのアメリカミズアブを何気なく見ていると、意外なことに左右の触角を交互に前後させている。人が歩くときに交互に手を振るように前後させているのである。私の知っている昆虫は、アリでもハチでも触角はだいたい同じような動きをする。と言うかそもそも後ろに動かすのを見た記憶が無い。(キリギリスの仲間のように長い触角を持つものは後ろにも動かすし、左右ばらばらにも動かすが。そしてゴキブリも)
触角は匂いを感知する。感知したい匂いは主に二つ。食べ物の匂いと同種の異性・仲間の匂いだ。
触角を動かしているときは、匂いを探っているときだ。原理的に考えれば、触角が長いほうが嗅覚が向上するだろう。しかし諸々の理由で無制限に長くは出来ない。移動するときに邪魔になってはいけない。外敵から逃げるときに邪魔になってはいけない。食事をするときに邪魔になってはいけない。交尾をするときに邪魔になってはいけない。
例えば敏捷に飛翔するアブの場合、触角が長いと飛行の邪魔になる。ノロノロ飛んでいると鳥などの外敵に狙われてしまう。アメリカミズアブもこの制約を受けて触角が短い。
私の今までの観察では、多くの昆虫は呼吸に合わせて、つまり蛇腹になった腹を伸縮する動きに合わせて触角を動かしている、というイメージがある。アメリカミズアブも腹部の伸縮に合わせてそれぞれの触角を動かしているのだろうか。
で、なぜ左右の触角がばらばらに前後に動くのだろう。そのことによって何か有利なことがあるのだろうか。
あれこれ考えてみたが、これといったものが思い付かない。可能性としては、
・嗅覚の向上が理由ではなく、同種の他の個体が見た時の視覚に訴えることが目的。
・体外環境が理由ではなく、交互に動かすことによって体内で有利な条件を作り出している。例えば筋肉の収縮期のズレが恒常性維持で有利に働くとか。
つまり今のところ、面白い答えが思いつかなかった、ということである。。
まぁ、こういうこともあっていいだろう。と言うか、しばしばか。
追記
触角の働きを調べてみると、嗅覚感知だけではなかった。熱、気流、音も感知するようである。