コクワガタのメスを飼っている。捕まえて間のない頃は、人影を感じると、すぐに潜って隠れていた。しかし毎日私が覗いていると、10日もしないうちに急いでは隠れなくなった。飼い始めて今で一か月だが、人影ぐらいでは隠れなくなった。
このコクワガタは、人影が動いても何も起こらない、と言うことを記憶し、その結果人影が動いても逃げなくてもよい、ということを学習したのだ、と思う。
他にこの現象を私には説明することが出来ない。
多くの人は、昆虫は学習しない、と思っているだろうが、少なくともコクワガタは学習するのである。
余談
影が動いても何も起こらなければ、逃げなくなっていくだろう。もちろん自然界ではそのような個体は食べられてしまう。なのでそのような遺伝子は残らない。これでは学習が発揮される機会がない。
影が動いても何も起こらない、と言う学習が成立するためには、影が動いても逃げない個体が必ず食べられてしまうと、学習する機会が与えられないので、捕食者が狩りを失敗する必要があるのだ。
実際には以下の進化をたどったと思う。
例えばヨダカとコクワガタの二者だけの関係で考えると、もともとヨダカは暗くて見ずらいので夜の狩りが下手だった。コナラの木にとまってコクワガタを探しているうちに動きを察知してコクワガタは隠れてしまう。夜目の利かないヨダカは淘汰されていき、すぐに逃げないコクワガタは食べられてやはり淘汰されていく。それぞれの種が競争しながら進化していき、いま私たちが見るのは、まっすぐにコクワガタに向かって飛んでくるヨダカと、動きを察知するとすぐに隠れてしまうコクワガタの存在になった。
つまり捕食者に失敗はつきものなのだ。失敗しながら進化していく。
故に学習が成立する機会があるのだと思う。