両親が田舎に引っ越した時、帰省すると、バーベキューを庭でよくした。 ドラム缶を縦半分に切って、炭焼小屋でもらってきた炭を入れて、猟師から買ったイノシシ肉を焼いた。 最初のうちこそ珍しく楽しかったが、夏の昼間は暑さを避けるため、夜は蚊を避けるため、冬は暖を取るために肉を焼いては家に持って行って食べるようになった。 そのうち焼く係が一人か二人だけ外に出て、残りは家の食卓で待つようになった。 つまり普通の食事になったのだ。
バーベキュー自体を冷静に味だけで食べると、実はそれほど美味しくない。 火の通りや調味料が不均一で、しばしば焼きすぎている。
だからバーベキューで焼いた肉や野菜を食卓に座って食べるとあまり美味しくない。
美味しくないのでバーベキューはそのうち下火になった。
今から思えばバーベキューとは何かが分かっていなかったのだと思う。 当時は炭や薪を使って肉を豪快に焼く調理法をバーベキューだと思っていた。 だから焼いた肉を持って家に入っても何も変わらないと思っていたのだ。
しかしバーベキューの本意は、いつもと違った空間でみんなとおしゃべりしながら食べることにあったのだと思う。
更に言えば、おしゃべりをして楽しむことが本意で、その舞台装置として非日常の空間と調理法があったのだ。