宿で多くの日本人に出会った。初めて見たときは、居心地が良いので、何となくメキシコに沈没している人たちに見えた。
福岡でバーで働き、30才前に独立し、3年半お店をやり、そのときにメキシコの食べ物と飲み物について客から話を聞き、興味を持ち、店を閉めてからも飲み屋で働きながらメキシコの勉強をし、ついに39才でメキシコに来てバイトを始め、なんと2ヶ月でお店の人に信用されて労働ビザを発行してもらった人がいる。朝11時頃出かけて、夜10時頃帰ってくる。部屋ではよくスペイン語の勉強をしていた。夢はベラクルスでたこ焼き屋をやりながら、宿を経営したいとのこと。私が予定外にベラクルスに寄ったのは、彼が永住地に決めた場所を見てみたかったからだ。
30才ほどの若者。初めて会ったとき、食堂の隣のイスに座っていたのだけど、汗臭いにおいがプンプンして、”きっとだらしない、いい加減なやつなんだろうなぁ”と思っていた。中国武道を宿の屋上でやっていたので、興味を持った。
強さを求めていくつかの格闘技を学び、そして自衛隊に入隊した。さらに老いても衰えない力を求めて、中国に渡り、理想の師匠を探し、ついに内弟子として1年住み込んで中国武道を体得した。
そしてその師匠が彼の考え方を徹底的に変えたらしい。武力や言葉や知力で相手に勝つことの無意味さを学んだと言う。師匠は、周りのことに一切こだわらず、自律していたと言う。彼はそのあり方をタオ”道”を用いて説明していた。
武道の練習を見たが、この押しをまともに受けたら、ぶっ飛ぶか、肋骨折れるだろうな、と思った。
オーストラリアで練習した、と言う火の玉を回す曲芸が大道芸人並みに上手く、”どうして色々なことができるの”と聞くと、1年にひとつ、何かを習得するようにしていると言った。いまはハーモニカで、訪れたその国々の人気のある曲をひとつ演奏できるようにしているとも。”みんなの前で吹くと喜んでくれるでしょう”
初めて会ったとき、服が臭かったのは、日本人旅行者のおじさんたちの観光案内をしていて、洗濯する暇が無かったらしい。
40才前の元気の良い旅行者。神戸でタイ式マッサージ店を10年経営する。このまま俺の人生終わっちゃうのかって思って店をたたみ、旅行に出た。ビジネスチャンスを探しての旅行。驚くほど経済のことをよく知っていた。西回りで1年半ほど旅行をしていたが、きのう日本から来ましたみたいな雰囲気だった。
あまり警戒しないと言うか、隙だらけと言うか、マックエアーなんかも宿の中だけどその辺に放りっぱなしで、”計算すると、2ヶ月に1回の割りでモノ盗られてるんですよね”と笑いながら言っていた。