少なくとも私の田舎では、自転車に乗るのは高校生までである。大人はどこに行くにも車を使う。自転車に乗っている大人をほとんど見たことがない。こちらでは、自転車は子供の乗る、格の低い乗り物である。
私は音の出ない自転車に乗って、周囲の音を聞きながら自転車を漕ぐのが好きだ。単車も走っていて気持ちがいいのだが、エンジンの音がうるさくて周囲の音が聞こえない。
誰も乗らないので虫ピンが劣化した実家の自転車を修理して、少し遠出をしてみた。
国道が海岸から離れて山の中に入っていく箇所がある。つまり、その海岸には細い車道しか付いておらず、行き止まりになった後は歩いて海岸沿いを進むことになる。
たまに漁師が来るぐらいで、人気のない静かな海岸で、昔から好きだった。
和歌山の太平洋に面した海岸は荒々しい。この海岸はすぐ後ろまで山が迫っているので、鹿やイノシシがよく出る。
海岸で弁当を食べた後、自転車に乗って山間部の道路を通って家に帰った。途中、あちこちでニホンミツバチの巣を見かけた。
夏と秋は、スズメバチがミツバチの幼虫を狙って巣を襲ってくるので、ミツバチは熱殺しようと巣の外で待ち構えている。
西洋ミツバチにはこの習性がないので、数匹のスズメバチがやってくると全滅するようである。
ニホンミツバチは西洋ミツバチと比べても、とてもおとなしく、巣に手を入れて手のひらでミツバチをそっとかき出しても、ほとんど刺されることがない。蜜を取るために巣を切っても全く攻撃してこない。悲しくなるほどおとなしい生き物である。
蜜を集める能力は西洋ミツバチの1/3ほどしかなく、逆にそれが、「いいところだけ集めている」ということになり、西洋ミツバチの蜜よりも高値がついている。
10年ほど前、一升瓶入りで1万円ほどで取引されていた。今はもっと 値上がりしているだろう。
追記
巣内の温度が上がって蜜が液化するのを避けるためにも、羽で風を送ろうと巣の周囲に出てくる。