2日後に、仕事が4連休になっていることに不意に気付き、大慌てで2泊3日の旅行の行き先を探し始めたが、準備不足で行き先を決めきれなかった。会津若松に行きたかったのだけれど、どうも暑いようで、あきらめた。
で、旅行に行ってる気分で、東京で過ごそう、と思った。具体的には、家には寝に帰るだけにする。そう考えただけで、ウキウキしてきた。
私は毎朝起きたらすぐにコーヒーを飲まないと気が済まない。旅行中も忠実に実行している。なので今回もコーヒーを飲まないわけにはいかない。近所のカフェを探すと、朝から開いてる個人経営の店がない。ドトールやベローチェ・スタバが7時あたりから開いているだけだ。
翌朝、せっかくカフェに行くのだから、皆さんがよくやっている読書でもしようと、アメリカンハードボイルド小説と実用書と帳面を持ってウキウキ出かけたのである。
カフェに行くまでの僅かな時間、非常に気分が良く歩いた。定年後、毎日カフェで新聞や小説を読んでいる、という話を見聞していたので、こういう気分で毎日過ごしているのかと、思いながら歩いた。
ドトールには7時過ぎに着いた。お決まりの窓際の席に座り、コーヒーをすする。旨い。ドトールはどういう偶然か、ときどき美味しいコーヒーを淹れる。
持ってきた耳栓をおもむろにする。早速帳面を開いて、考え事の続きを始める。うーん、なぜか環境が変わると集中できる。考え事に疲れたら、ハードボイルドを読み始める。非常に充実した時間で気分が良い。
3時間ほど過ごした後、図書館に行って読書を続ける。昼前に前から気になっていた駅前のインドカレー屋に昼食を摂りに行く。驚いたことに満席で入れなかった。仕方が無いので、オダキューOX(スーパー）でタンドリーチキン弁当を買う。
それを持って自転車で多摩丘陵にある林の中に作られた霊園に行く。クワガタでも探すか、という算段である。途中、多摩川の土手で弁当を食べる。
霊園は広く、とても疲れたが、樹液の出ているコナラの木を何本か見つけた。早朝に来れば見つけられる可能性がある。
夕方帰宅の途に就き、途中、成城石井（スーパー）に寄って、ちょっと高級なマリネの総菜を買い、家に戻った。総菜をあてに、飲めない酒を少し飲み、その後バニラアイスにバナナ2本を入れて夕食として食べた。初めての組み合わせだが、悪くない。
非常に楽しい一日だった。ウキウキしながら明日の予定を立てて、眠りについた。
翌朝、昨日行ったドトールに向かって家を出た。道すがら、気が付くと昨日のようにウキウキしていない。もう飽きてしまったのかと、いぶかりながらも、店に着き、昨日と同じ席に座る。注文したコーヒーがこれまた薄くてまずかった。
帳面を広げ、さて考え事の続きをしようと思ったのだけど、どうしても集中できない。というか考えが進まない。頭が回っていないようだ。仕方が無いので、小説と実用書を代わる代わる読んだ。
もうこの時点で気が付いていたが、この疑似旅行が、未知の領域から既知の領域になっていたのだ。
昼食は天丼てんやに行った。去年の夏、食中毒になったとき、無性に魚のてんぷらが食べたかったのを思い出したのだ。530円だった。驚きの値段である。
午後からは趣味のサボテン・多肉植物を買いに、品揃えが良いというコーナン港北インター店まで自転車で20キロほど漕ぐ。最高気温が35度だったので、さすがにこたえた。直射日光に当たってこんなに汗をかくのはインドに行った時以来だ。
サボテンに囲まれて幸せな時間を送った後、家路についた。
家に帰って分かったことは、昨日より今日のほうがウキウキしてなかったこと、そして今日より明日のほうがウキウキしていないだろう、と言うことだった。
あれほどウキウキしていた昨日が懐かしい。
近々また4連休があるが、どうして過ごそうか迷っている。
既知領域を楽しむ為には、今ここをパラダイスにするしかない。この瞬間に幸せを感じる、生きる目的を、今が幸せであること、にするしかないと思う。
